結論:公的資料で言い切れること
リポソームは、厚生労働省の通知「リポソーム製剤の開発に関するガイドライン」(2016年3月28日)で、「両親媒性脂質分子の二分子膜からなる微小胞」と説明されています。内部には水を含む部分(内相)があります。
ただし、この定義が載っている公的な資料は、医薬品(リポソーム製剤)の資料と学術誌だけです。食品を対象にしたリポソームの定義は、今回確認した資料の中にはありませんでした(確認日2026年10月6日)。
このコラムでは、確認できた定義と、確認できなかったことを分けて整理します。
リポソームとは何か
通知の定義を言葉ごとに見る
通知の本文(1.はじめに)と用語集は、リポソームを、脂質の分子が二分子の膜をつくり、その膜で囲まれた小さな袋状のもの、と説明しています。言葉を順に見ると、次のとおりです。
| 言葉 | この資料での使われ方 |
|---|---|
| 両親媒性脂質分子 | 膜をつくる材料として書かれている脂質の分子 |
| 二分子膜 | 脂質の分子が2層に並んだ膜。同じ文書の別の箇所では「脂質二重膜」とも書かれています |
| 微小胞 | 膜で囲まれた小さな袋状の構造 |
| 内相(水性画分) | 袋の内側にある、水を含む部分 |
通知は、リポソーム製剤を、有効成分(医薬品の主成分)をリポソームの「脂質二分子膜又は内相に封入する」ことでつくるもの、と書いています。定義が指すのは「膜でできた小さな袋」という構造で、何を入れるかは別の話です。
学術誌と補助事業報告書の説明
日本薬学会の「薬学雑誌」128巻2号(2008年)の序文は、リポソームを「リン脂質を主体とする閉鎖小胞」と述べています。通知の「脂質の二分子膜」と同じ方向の説明です。
厚生労働省の補助事業として北海道大学の研究チームがまとめた報告書(2015年3月)にも、ほぼ同じ文言の定義があります。この報告書は、リポソーム製剤を「リポソームに封入した有効成分を含有する医薬品」としています。
公的機関の資料の整理
リポソームという語が出てくる資料と、出てこない資料を並べました。
| 資料(機関) | 「リポソーム」の扱い |
|---|---|
| リポソーム製剤の開発に関するガイドライン(厚生労働省、2016年) | 本文と用語集で定義。対象は医薬品(リポソーム製剤) |
| リポソーム製剤の化学、製造、及び品質管理に関する素案(厚生労働省の補助事業の報告書、2015年) | 用語集で定義。リポソーム製剤は医薬品と説明 |
| 薬学雑誌128巻2号(日本薬学会、2008年) | 序文で「リン脂質を主体とする閉鎖小胞」と説明(学術) |
| 食品表示基準(内閣府令) | 条文の全文を検索して、「リポソーム」の語は0件 |
| 健康食品の素材情報データベース(医薬基盤・健康・栄養研究所) | 素材一覧のページに「リポソーム」の語は0件 |
まとめると、定義が書かれているのは医薬品と学術の資料だけで、食品の「リポソーム」を定めた公的資料は確認できませんでした。食品表示基準にも語が出てこないため、「リポソームビタミンC」のような名称にも、公的な定義は確認できていません。確認していないものを「ない」と言い切ることはできませんが、今回の範囲では見つからなかった、という意味です。
なお、食品の表示全般については、健康増進法第65条が、食品として販売する物の広告その他の表示で、内閣府令で定める事項について著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させる表示をすることを禁じています。リポソームという言葉に限った規定ではありません。
読者が使える見方
「リポソーム」と書かれた食品を見るとき、公的資料の定義から、次のような点を確かめる手がかりが得られます。
- 何を包んだものか。定義は袋の構造を指すだけで、中身は製品ごとに異なります。
- 膜の材料は何か。学術誌にはリン脂質を主体とする説明がありますが、個々の製品の材料は、表示や販売元の説明で確認します。
- その説明に、出どころが示されているか。食品の「リポソーム」を定めた公的な基準は確認できないため、どの資料に基づく説明かが分かるかどうかが目安になります。
通知は、リポソーム製剤で特に考慮すべき品質特性として、粒度分布(粒子の大きさの分布)、形態・構造、表面電荷、膜の熱力学的特性、有効成分の封入率などを挙げています。これは医薬品の開発ガイドラインの項目で、食品を対象にしたものではありません。ただ、資料や説明書きで見かけたときに、言葉の意味を知っておくと読みやすくなります。
成分の表示の見方は、原材料と表示のページにもまとめています。
BIYU Natural VC98について
BIYU Natural VC98の名称は「ビタミンC含有加工食品」で、栄養機能食品ではありません。販売ページでは、リポソーム型、タイムリリース型、ピュアビタミンCの三つの形を重ねた設計と説明し、リポソームを「リン脂質のカプセルで包んだビタミンC」としています。製造者は三生医薬株式会社、販売者は株式会社プロップスジャパンです。
この説明は販売ページの記載です。上で見た厚生労働省や日本薬学会の資料の定義とは別のもので、両者を照らし合わせて確認したものではありません。原材料の全文は原材料と表示に、よくある質問はよくある質問にあります。
よくある質問
リポソームは医薬品だけの言葉ですか。
今回確認できた定義は、厚生労働省の医薬品の資料と、日本薬学会の学術誌のものでした。リポソームを医薬品だけの言葉と定めた資料は、見つかっていません。食品での使われ方を定めた公的資料も、確認できていません。
「リポソームビタミンC」の意味は、公的に決まっていますか。
公的な定義は確認できませんでした。意味を知るには、リポソームの定義(脂質の二分子膜の小胞)と、「ビタミンCを包んだもの」という製品側の説明を、それぞれ確かめて読むことになります。
食品のリポソームと、医薬品のリポソームは同じものですか。
同じとも違うとも、確認できる公的資料はありません。通知の定義は構造についての説明で、食品について述べたものではないため、このコラムでは両者の関係には踏み込みません。
出典一覧
| 機関名 | 資料名 | URL | 確認日 |
|---|---|---|---|
| 厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課(PMDAサイトで公開) | 「リポソーム製剤の開発に関するガイドライン」について(薬生審査発0328第19号、2016年3月28日) | https://www.pmda.go.jp/files/000213460.pdf | 2026-10-06 |
| 厚生労働省医薬品等審査迅速化事業費補助金 脂質ナノ粒子WG(PMDAサイトで公開) | リポソーム製剤の化学、製造、及び品質管理に関する素案(報告書、2015年3月) | https://www.pmda.go.jp/files/000208789.pdf | 2026-10-06 |
| 日本薬学会 | 薬学雑誌 128巻2号 185-186頁(2008年)「DDSにおけるリポソーム研究の最前線」序文 | https://yakushi.pharm.or.jp/FULL_TEXT/128_2/pdf/185.pdf | 2026-10-06 |
| 医薬基盤・健康・栄養研究所 | 健康食品の素材情報データベース 素材一覧 | https://hfnet.nibn.go.jp/material-infodb/list/ | 2026-10-06 |
| e-Gov法令検索(デジタル庁) | 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号) | https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010 | 2026-10-06 |
| e-Gov法令検索(デジタル庁) | 健康増進法 第65条 | https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103 | 2026-10-06 |
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